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大阪高等裁判所 昭和53年(ラ)47号 決定

抗告人 安富敬祐

抗告人 一条金水

主文

原決定を取消す。

本件競落を許さない。

理由

一、本件抗告の趣旨と理由は、別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

売買契約と同時に買戻の特約を登記したときは、買戻は第三者に対しても効力を生ずる(民法五八一条一項)ところ、本件記録によると、件外神戸市住宅供給公社は昭和五〇年三月一八日債務者樋上恭造に対し本件不動産を売却するに際し、右債務者が右公社の承諾をえないで本件不動産に抵当権を設定したときは右公社において買戻すことができる旨特約し、よってその旨の買戻特約の登記(土地については神戸地方法務局御影出張所昭和五〇年五月三〇日受付第一二七四二号建物については同第一二八〇二号)がなされたこと、その後右債務者が右公社の承諾をえないで本件不動産に本件根抵当権を設定したこと、および昭和五三年二月一〇日神戸地方裁判所昭和五一年(ワ)第一六六号事件につき同裁判所において右公社と右債務者との間に、右債務者は右公社に対し本件不動産につき昭和五〇年三月一八日付右買戻特約に基き、同五一年一月一〇日付買戻を原因として所有権移転登記手続をする旨などの和解が成立したことを認めることができ、右認定を妨げる証拠はない。右事実によると、買戻の特約を登記した件外公社(売主)が、買戻権を行使して本件物件の所有権を取得した結果、買戻特約の登記がなされた後本件物件につき設定された本件根抵当権は、件外公社の所有権に対抗することができなくなったわけであり、従って右根抵当権の実行としてなされた本件競落もこれを許すことができなくなったといわねばならない。

そうすると、原決定は失当に帰するから、競売法三二条二項、民訴法六七二条一号により原決定を取消し本件競落を許さないこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 下出義明 裁判官 村上博巳 吉川義春)

〈以下省略〉

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